観察者で傍観者。 僕はそうなのだ。自分は安全なところでいて、文句を言うだけの存在。 何をしたいというわけでもなく、何を得たいというわけでもなく。 古谷綾の、国体選手に選ばれていたのにも関わらず、怪我をしたくやしさと友人を笑顔で応援するその胸の痛みを僕は眺めて、ぼくは安全なところにいて、そして楽しんだのだ。 カズヤは、サッカー選手を嘱望されていたのにも関わらず親の意向であきらめた。家庭環境の複雑さからくる両親へのよじれた愛情に煩悶し、うっぷんをためていく様子を眺めて、小爆発して憂さを晴らすのを見て楽しんだ。 カズヤは、じっと見つめる僕が、観察者で傍観者のままでいることをよしとしなかったのだ。 女子にやたら人気な教育実習をするのに年をくっている先生はめざわりだから、人生のどん底に落してやろうという悪だくみにカズヤは僕を巻き込んだ。僕にとっての暇つぶし、カズヤにとっての憂さ晴らしは何段階かにわけて進んでいくだろう。 ひとつは、僕が光村漸を落とすことができるのかどうか。 ふたつは、キスしている写真をとる。 みっつめは、それを教育委員会かPTAに暴露する。 光村は、ふたりきりの美術室に僕といる。彼のふとももの上に僕を座らせ僕が息を継げなくて喘ぐのも構わず唇を重ねる。気が付けばブレザーのジャケットが脱がされていた。 シャツがズボンから引き出され、ざらりとした光村漸の熱い手が腰から背中に触れる。 僕は光村の肩に腕にしがみついた。体も頭もしびれ、足場がなくなるような浮遊感で目が回る。 ざらつく手は僕の知らない快感を呼び起こす。首筋まで探った手が感触を確かめるようにゆっくりと下がっていき、ウエストから前にまわされる。他人に触れられる感覚にぞくぞくする。 唇が解放された。細められた目がじっと僕の顔を見つめていた。 「観察者と傍観者であることから降りてくる?」 光