校内のどこのイベントに顔をだしても、東郷秀樹は歓迎される。 はじめのアレが、こんなふうになったんだな、見違えるようになったな! そうやって素直に感心する。 秀樹はこの数週間、いかに苦労して時間をさいて、校舎の壁を飾る巨大なパネルを絵の具にまみれながら手分けして作成していたことを知っている。 セリフが覚えられず、泣きながら一人でこっそり練習していたのも知っている。 あまり来賓や学生がこなさそうな、外れに場所を取ったところにも足を運ぶ。 気にかけてくれたことが本当にうれしそうである。 彼らの笑顔をみると、この人生初の大仕事であった運営委員長代行という仕事も、自分で評価するのもなんではあるが、かなり上々であるといえた。 東郷理事長と南野理事代理も満足そうであった。 空が真っ赤に夕日に染まり始めていた。 カツンという音と共に、煌々とライトが四方からイベント会場を照らす。 VESの第一試合がまだ続いている。 リーダーの太一は休憩を取っているようで、舞台袖のパソコンテーブルには黒めがねの敦賀しかいなかった。 彼は秀才で、太一と同様に一般である。 プログラムの才能に恵まれる者は、一般からが多いようだとなんとはなしに秀樹は思う。 人気投票の結果が気になり、ぐるりと舞台をまわり、敦賀の後ろから近づいた。 敦賀は試合を見ているわけでもなく、画面に映し出される人名とその横の細かな数値を見ていた。 10000までの数字は選手が獲得したポイントだとわかる。 そして、その横に人気順位と、小数点がついた小さな数字があった。 見ている間にその細かな数値は変わっていく。 「敦賀、明日のエキシビションには誰がでてきそうなんだ?」 声を掛けると、秀樹が返って驚くぐらいに、敦賀は文字通り飛び上がらんばかりに驚いた。 見られてはいけないものを隠すかのように、目の前で画面が