「衝撃な告白だったが、おい、あいつ大丈夫なのか?てか、ひびき知っているのかよ?」 たこ焼き屋台にたつ汗だくの剛が首をむけ、日々希に聞く。 昼に向けてどんどん売れ始めていた。 日々希は知らない。寝耳に水である。 午前中善戦した日々希は、鉄板にあぶられるという灼熱の前線で働くことを免除され、船とつまようじの準備や足りなければ足元の段ボールから取り出し、並べるといった裏方仕事である。 「お姉さんがこの学校にいることは知っていたけど、そのお姉さんが曲を作っていたことも歌が上手なことも知らない」 和寿と西条は、日々希の近く、たこ焼き屋台の奥に、臨時のテーブルを出して座っている。もはや彼らの定位置である。 両サイドのスクリーンが取り払われ、真ん中の巨大なスクリーンに大きく樹里亜と真里亜の雰囲気のよく似た二人を映し出していた。 思い返してみれば、日々希にはよく理解できた。 樹里亜がジュリアとして活動する時、それは真里亜なのだ。 姉の真里亜を樹里亜はずっと演じていたのだった。 だから他人を演じ続けるストレスの限界を超え自分があふれ出してしまう。 自分を救うために逃げ出したのだ。 そして樹里亜は、ねじれた問題を根本から正そうとしている。 それは同時に姉を救うことでもあると信じている。 日々希が和寿との関係に悩んでいた時、樹里亜も姉との関係を悩んでいたのだろう。 「相当うまくやらないと、ジュリアは芸能界でやっていくのはやばいんじゃない?」 観客席からそんな無責任な会話が漏れ聞こえる。 和寿と西条は無言である。 人は人。自分は自分。 自分に直接かかわってこない限り、余計なことには関わらない。 基本的に我関せずなのだ。 司会役はいったん休憩を告げる。 エグゼスの舞台を作る必要があったからだ。 しかしながら、椅子が取り払われドラムが設置されてもエグゼス