樹里亜はタンクトップからワンピースに着替え、髪を下ろす。 いかにもお嬢様となる。 午後のイベントはジュリアから始まる。 去年ごろから体調を崩しがちな姉と保健室にいた。 保健室は校舎の玄関に近いところにあって、玄関から特設舞台の裏へはすぐである。 たまにその様子を見に訪れると姉は、次第に元気を取り戻しているようである。 その姉のお気に入りの場所は保健室で、その保健室には姉が入り浸るのが納得がいくような、銀髪の目の覚めるような美男子の先生がいる。 大和薫英学院には、毎度、何かしらに驚かされるところである。 本来なら授業をすべて受けることができなくなった時に、大和薫英学院を退学するのが順当な流れだった。 だが、自分たち姉妹には帰るべき家はなかった。 数年前の大不況で、実家の家業は傾き、両親は失踪してしまった。 姉の学費は2年の終わりまで払い込まれていたので、そのまま学校に通い、ジュリアは親戚に預けられることになったのである。 2年の間に真里亜は進む道を音楽に定めた。 歌が慰めであり、姉の詩と歌は美しかった。姉の作った曲に樹里亜はアコースティックギターで音を乗せる。 その楽曲を姉が好きだというエグゼスの所属するエイダッシュに送ると、姉にデビューの声がかかった。 デビューの準備が着々と進むなか、大和薫英学院というブランドをエイダッシュは利用することを考え、真里亜の3年卒業までの授業料を肩代わりする。 結果的には、人前にでることを好まない病弱な姉は歌手デビューを断念し、そのかわりに伴奏をしていたジュリアに白羽の矢が立てられたのだった。 あなただけにの曲は真里亜の曲である。 学生として最高の環境を姉に失わせたくないために、樹里亜は彼女のかわりにデビューした。 エイダッシュの山口社長の説得に応じたからで、それで、樹里亜はたまに真里亜の様子を見つつ、新た