(112) ②人気勝負です。

4104 Words

芸能事務所のエイダッシュの稼ぎ頭、エグゼクティブスマイル、略してエグゼスは既に大和薫英学院入りしていた。 自分たちのために特別に設置されたイベント会場を大きく避けて、控室である会議室に案内をされる。 ゲスト出演のやり取りの窓口となった運営委員会に出場することを承諾するのと引き換えに突きつけた細かな要求が、その控室には反映されていた。 イベント会場に近く、だけど静かであること。 プライバシーを保てるために鍵付きの部屋であること。 部屋の中には横になれるようなソファを用意すること。 残暑が厳しい折に行われる野外のイベントなので、コンパクトな冷蔵庫を用意すること。 ここからでもイベント会場の様子が見れるようにipadか何かを置いておくこと。 全身を確認できる姿見を用意すること。 自分たちが許可を出したもの以外はこの場所に誰も近づけないこと。 ただし、ファンの可愛い女の子は別であること……。 文化祭に呼ばれるゲストたちが通常そうであるように、演料は彼らからの知名度や他との出演料と比べると雀の涙のようなものである。 学院祭の取りまとめをしているココの運営委員会はどうしても参加をしてほしいらしく、コネを利用し山口社長と個別に連絡をとり約束をとりつけた。 断れないのであればと出場の引き換えにとわがまま放題に要求したことはすべてが叶えられている。 よっぽど機嫌を取りたいのだというのがわかる。 学院祭に誰もが知る人気者を招くことで、その出来合いの人気を借りて盛り上げようとは安直な方法だった。 リーダーの宗也はソファに尻を落とした。 腰につけた鎖がじゃらりと鳴る。 メンバーのケイ、リョウ、ジュンは、それぞれドラム、エレキギター、ベースである。 宗也が見出した見た目はそこそこではあるが、腕は最高の、彼のメンバーである。 宗也が自分の仲間にひきいれ、彼らの起

Free reading for new users
Scan code to download app
Facebookexpand_more
  • author-avatar
    Writer
  • chap_listContents
  • likeADD