太一の部屋は206号室である。 ルームメイトは午後の事件に駆けつけてくれた早川。 その夜にいがけない訪問者が訪れた時、気を効かせて部屋を明け渡してくれていた。 訪問者は初めてみるのか二人部屋のこじんまりとした相部屋を眺め、踏み込むのを少しためらった。 「どうぞ。話があるのでしょう」 太一がいうと、その思いがけない訪問者、和寿はついっと二人部屋に入ってきたのだった。 人の手の息遣いが残る一流の職人の手による調度品が、和寿には似合う。ここには、和寿が手を伸ばしたくなるようなものは何一つない、学習すること、寝ることだけの味気ない部屋である。 来客用を迎えるための椅子などない。 部屋は左右の壁に向かい合う形でベッドを置く仕様である。真ん中にレールがあり仕切りカーテンがかかるが、今は奥までカーテンは窓際にまとめられていた。 ギシッと太一は自分のベッドに腰を落とす。 和寿寿はぐるりと眺めて、早川のベッドに腰かけた。 和寿はこの部屋には似合わなかった。 「今日のこと、聞かせてほしい」 単刀直入である。藤日々希の関係であることは当然予想できた。 太一のために彼が来ることはない。あのキスを見て、太一が夢を抱き続けるほど馬鹿ではない。 太一はいきさつを話した。 和寿が情報室をでると、日々希が話しかけてきて、そこへ昨日の三人の上級生を含む5人組がやってきたこと。太一を恐喝をしたこと。 差し出そうとした太一を日々希が止めたこと。 怒った上級生がナイフを出し、脅されて校舎の影に連れ出されたこと。 二年の岡村をはじめ、上級生のグループはたびたび太一にちょっかいをかけてきていたこと。 恐喝されることは今まであったが、ナイフまで取り出されたことはなかったこと。 上級生は日々希が例の子であるといい、西条襲撃事件で未然に済ませたキーパーソンなのか知りたいようだったこと