「ほんとにお前は……」 和寿はベッドに腰を掛けさせた日々希を見る。 改めてみると、ネクタイは紛失し、シャツのボタンもなく、スラックスは泥で汚れ、ボロボロである。 小さくため息をつくと、体を隠す意味を失ったシャツを脱がせ、体の怪我を確認する。 手首にはてんてんと赤い小さなアザがある。 「痛むか?これはたぶん俺だと思う」 ナイフを持つ手を止めた時に、日々希から思わぬ反撃を受けかけて、強く握って動きを封じたときのものだった。 ううんと、日々希は首を振る。 まだ、アドレナリンの為か、体の痛みを感じ取れていないのかもしれない。 彼らはあの現場から、まっすぐに301号室に戻っていた。 事後処理は、北見がうまくやってくれる。 最近は、和寿と日々希が一緒に行動しているときは、北見には距離をとらせている。 和寿が情報室を出るときも、昨夜の上級生に絡まれた話もあったので、念のために北見を日々希の方に置いておいたのだ。 「他に痛むところはあるか?」 「わからない……。どこもかしこも。痛いような気もする」 手首以外にもあちこちにアザができていて、和寿はひとつひとつ確認をしていく。 そんなにひどい怪我はしていないようではあった。 ぼたんのないはだけた胸の乳首の上に、小さな赤いアザを見つけた。 「これは、なんだ?」 「これは岡村が……」 膝をついて、許しを乞うていた西条派の二年生の顔が浮かぶ。いかにも暇をもてあましているようなやつであった。 西条派は下層におりるほど、規律や戒律に従わずやんちゃ度を増していく。 この学校に通う限り、自分だけはそういう羽目を外してもいいなど甘い考えを払拭させなければならない。 日本全国へ、どの分野でも下っぱではなく太い柱として精神的な支えになる育てるのも、この学院のめざすところであり、西条派の当代の四天王の西条弓弦の責任であろ