1学期の終業式が執り行われていた。 学院全体の学生を代表した東郷進一郎の挨拶も終わる。 理事長、北条久嗣の訓示が続く。 「……リクレーションとして楽しむ海や山にも自然の危険があり、怪我をしないように……」 休みだからといって、羽目を外さずによく遊んでよく学べ。 親には感謝を言葉できちんと伝えること。 日頃できないことにじっくりと取り組んで、一回り大きくなって全員が元気に二学期を向かえようとかなんとか。 北条理事長がきわめてあたりさわりのなさそうなことを言っている。 理事長がこういう場に出てくるのは非常に稀であった。日々希も見るのは初めてである。 理事長の名前が北条ということを今さらながら日々希は知る。 特待生合格通知も、署名は北条久嗣だったことを思い出す。 はじめて見る理事長は、40代のハンサムな男である。 話し方も、声のひびき方も、姿勢も、何もかもが決まっている。 見られることに慣れた者の余裕が大人の男の色気と混ざり合う。 女子生徒たちは、北条理事長の登場にキャーと卒倒しそうな大騒ぎである。 「年代的には和寿の父親?」 その声を拾った西野剛が振り返り、鼻に皺をよせ、はあっという顔を向けた。 相変わらず、可愛い外見を裏切る表情をする友人である。 日々希は和寿から一度も父親が理事長であると聞いたことはない。 なので、叔父さんか誰かかな、と勝手に思ったのだった。 朝から青空が高く眩しい。 これ以上ないぐらいに良い、学期終わりだった。 既に四天王たちのお迎えのヘリがパラパラと空気を叩きながら、寮や校舎のヘリポートを目指して上空を飛んでいる。 ヘリで帰らない大多数のもの学生はお抱えの運転手を呼んでいる。 すでに朝から寮前のロータリーを何十台もの高級車が待機し、校門へ続く桜並木に沿って一直線に並んでいた。 「終わったな!」 日々希は