アジール王子のエスコートは流れるように自然で、スマートであった。 コーヒーカップを手にした日々希は差し出した形のまま、さらりと導かれてしまう。 「あなたはここに」 真ん中のテーブルの、和寿の席に座らされるが、落ち着きかけたその腕を和寿は引き上げて、ひとつ遠い席に座らせ直す。 「おまえはこっち。アジール王子の隣は今日はわたしがお約束いただいておりますので」 ほがらかな表情ながら、有無を言わさない口調で日々希にいいつつ、アジールにも牽制している。 「そうだった。すまなかったな」 アジールは軽く和寿に謝った。 彼は、日々希がテーブルに同席したということで、ひとまず満足したようだった。 アジールが席を立ったために中断していたお茶会が、一人の新たな客人を加えて何事もなかったかのように再び動き出す。 南野京子は隙のない完璧な笑みを浮かべ、アジールに選りすぐりの友人たちの紹介を再開する。 先程のアジールが話す日本語をきき、京子も日本語に切り替えている。 紹介された学生たちは、アジールと会話を試みるも、そっけない返事しかもらえていないようだった。 それが何人も続いてる。 すごすごと彼らが引き下がる前に、東郷が話を膨らませようと彼らに声をかけてきた。 一度、授業の後の過ごし方で、クラブ活動の話題が上る。 それにはアジールは珍しく興味をひかれたようだった。 「みんな、授業の後に自主的に行われるクラブ活動というものに所属したりしているのか?学業以外に学生が熱心に取り組むものがあるということを初めて知った」 と聞き返す。クラブ活動は世界に珍しい日本独自に発達した、課外活動である。 大和薫英では専任の先生を招聘したりして、かなり力を入れている。 アジールはクラブ活動なるものは習いごととは違うのか、など聞いている。 「参加者は学生の八割というところでしょうか。