調書をとる部屋は、教職員の会議室が使われていた。 和寿は北見から呼ばれたメンバーを既に聞いている。 ターゲットであった西条弓弦。 至近距離で全てを見ていた二年の社交部、南野京子。 状況を把握しまっさきに警報ボタンを押した三年の空手部、東山圭吾。 グレーのパーカーを押さえた柔道の山田蒼穹(そら) 黒のパーカーを押さえた一年、西川雄治。 現場となったムーンバックスカフェの髭の店長である。 そして、銃を確保した二年、北見浩二。 彼らは直接事件の現場となり関係した者たちで、今朝で二度目の調書となる。 初の調書は、精神的ショックを理由に呼び出しを拒否していた北条和寿と日々希だけであった。 彼らは誰も、教職員の会議室前に置かれた9席の椅子には座っていない。 和寿は、ノックして返事が返るまえに扉をあけた。 瞬時に会議室の中を確認する。 女子寮、男子寮、教師寮の各寮長、学内全体の警備を任されている東郷警備保障の責任者4名に、理事4名がコの字に置かれたテーブルについていた。 正面には理事5名の席がある。 左から、東郷、西条、北条、南野の理事たちが座っている。 彼らは深夜や早朝の静けさをパラパラと破りながらヘリでやって来た、各派閥の頭領級の者たちである。 東郷は渋く厳しい面持ちの60代。 西条はオールバックで頬に刀傷の40代で、羽織り袴の正装である。一見して堅気でない。 北条はダンディーな三つ揃えのスーツの70代。真白な髪はきれいに櫛の目があてられている。 彼らは呼び出しに不機嫌な様子を隠しもしない。 南野は代理で、男ながら長い髪を後ろで一つにまとめ、着流し姿の30代後半である。 南野だけはにこにこと笑顔で他の三人と別の空気をまとっている。 超多忙な彼らが一堂に介することはほとんどない。数ヵ月前の入学式でさえ、時間の都合をつけられた南野の代理しか