「なあ、おまえ、人前が苦手だろう!」 前置きなしの突然の剛の指摘に日々希はむせた。 お昼の時間だった。食事時は朝食も昼食もなんとなく外部からの入学組が集まってきている。 日々希と西野剛は同じ総合クラス2、川嶋や今野修司は一般クラス1である。 とくにこの四人は柔道で東郷秀樹にやられていた今野を介抱したこともあり、急激に仲良くなっていた。 今日の定食は海老フライである。くるんと丸まった大きすぎない海老がくるくると重なりあい、奥には千切りキャベツが山盛りに盛られている。それに味噌汁とご飯がつく。メイン以外はお代わりができる、育ち盛りには嬉しいサービスになっている。 「いきなり何をいいだすかと思ったら……」 日々希はハンカチで口許を拭った。 海老フライを口へと運ぶ箸を空中でとめ、剛は思案気に続ける。 「ひびきの人前苦手度は二重人格者級だと思うよ。授業中と、今のような時はまるで別人なんだ。 いや、もっと厳密にいえば、皆の注目を集めるときとそうじゃない時の差がでかい。注目を集めていたら口調はしどろもどろで足なんてがくがくしてるだろ。そして、その人数の境界線は十人とみた!」 「あ、そのこと。僕もなんとなく気がついてました。はじめは体調がすぐれないのかなと思ってたんですけど」 川嶋もいう。その横の今野もうんうんとうなずいている。 お昼時の食堂はざわめきの中にあった。 日々希は人の気配の溢れたこのざわつく状況もようやく慣れたとはいえ、居心地が良いかというとそうではない。いちいち気にしないようにしてはいるが、正直のところ落ち着かない。 食事に集まっている学生や先生たちだって、めいめいが友人たちとの食事を楽しんでいるだけである。 彼らが何かを日々希にしようとしているわけではない。 どうして落ち着かない気持ちになるのか日々希は理由がわからない。 「剛の方が、僕た