朝目が覚めると、時間を一気に巻き戻していた。 日々希は顔も洗わずにパジャマのままの、父と母が揃ったトーストの朝食。 昨日までの、朝一番に制服の人に溢れたざわめく食堂が夢のようである。 剛も、今野も、そして当然、目を引かずにはいられない和寿もいない。 食器をいつも当然のように片付けてくれる山田もいなくて。 「流しまでよろしくね」 母の声かけで、食器を流しに持っていくことを思い出す。 「普通、寮生活なら自分のことはなんでも自分でするようになると思ったのだけど違うのね~」 痛い母の言葉。 「僕を甘やかすヤツがいるんだ」 父はうん?と眉をあげ、何か言おうとする。 「ああ、そういえばわたしも、あなたには散々甘やかされたわ~!!」 父よりも早く母がいう。 目の前で昨晩の続きを始めようとする気配を察して、日々希は慌てて咳をした。 両親のスイッチを息子の自分が朝から好き好んで押したくはない。 だが、こうして母を改めてみると、北条や西条、そして父で争ったという、片鱗がみえないわけではない。 母は普段着は体の線を、かしたゆったりした服に、いつもノーメイク。 肌はきれいでパッチリした目をしている。 髪はいつも後でひとつに束ねているので、昔から地味な印象であるが、それは父の無精髭のように、カモフラージュに近いものなのではないかと、昨晩の衝撃的な事実を睡眠中に整理できた頭で思う。 その体の輪郭をスッキリ見せる服をきて、髪を整え、きれいにメイクをすれば、肌のきれいな母はたちまち、美人になりそうである。 絶対不可侵の近寄り難い、あの美貌の南野京子は姪っこだそうだ。 となると、南野京子と日々希はいとこだった。 誰かが似ているといったこともあるような気がするのだが、それもそうだったのだろう。 南野京子は近寄り難いオーラをまとっていたが、日々希の母にはそれがない。