(48)幼馴染の海斗

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久しぶりにあった親友は顎や尾骨が張り出し、目元の甘さも薄まって、少し大人の男へ面変りしていた。 同年代の卒業生が全員、竜崎村をでて高校生活を送っていた。 海斗は一直線に日々希の家にきて上がり込み、まだ家に帰っていないという。 朝一番の列車で戻ってきて、一番に会いたかったのだという。 日々希を抱き締めたその腕は長く強くなっていた。 たったの4ヶ月しか合わなかったのに、海斗はぐっと成長期を向かえていた。 海斗の父、山南仁志は、180センチを越える熊のような男である。 酒も女も好きな豪胆で、この付近を束ねる限界集落の、三つの村の自治会長である。 息ができないほど抱きしめられて、海斗もいずれ彼の父親ほど豪快な男になるのだろうと日々希は容易に思い描ける。 抱きしめられているのに、日々希の意識は海斗を離れ、別のところへ流れだす。 自分のことをコイビトという、秀麗な男、北条和寿はどんな男になるのだろうか。 学年トップで、常に努力を怠らず北条を継ぐ覚悟を決めている、秀麗な同級生。 今はすぐそこにいるのに、気がつけば一足飛びに、日々希の手の届かないところに行ってしまいそうだった。夏休みが終わるころには、もうそうなっているかもしれない。 一学期は慣れない学校生活に、事件に、そして何より和寿に翻弄された。 和寿がいなくなれば、入学前に思い描いたような平凡な学生生活を送れるのだろうと思う。 この帰省で判明した南野家の血筋から果たす役割は、何もない。 南野京子のいとこであることは、日々希の学校生活になんの影響もなさそうだった。 頭を振って、余計なことを追い出す。 今は、この驚くべき成長を遂げた幼馴染である。 「おまえ、どれだけでっかくなったんだよ!」 聞くと、現在180センチであり、10センチ伸びたという。 年上の彼女もできて、東京の大都会での充実寮スクール

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