和寿はアジールの肩に手をかけ、力の限り引き離した。 「離れろ!何をしている!!」 「解放を。彼は苦しんでいる」 怒りをにじませる和寿と対照的にアジールは冷ややかである。 「部屋に入る許可はしていないんだが」 「あいにく、ひびきを襲い掛かるようなヤツの元に二人きりにしておくつもりはない」 和寿の息は熱く荒い。その目は欲望と怒りにギラつく。 その手には拳が握られ、アジールの喉元に突きつけた。 アジールはこのまま殴られてもおかしくない一触即発の状況である。 そうなっていないのはアジールがアラブB国第二王子であるからで、和寿の強靭な精神力が拳を押し止めている。 その抑制も揺らいでいるのだが。 「こいつを連れて帰らせてもらう。騙して毒を飲ませるやつらと金輪際一緒にはいさせられない。俺もお前のサーバント遊びから降りさせてもらう。次からは南野京子の差し出すものから選ぶんだな」 日々希は顔を真っ赤にしたまま呻き続けている。 完全に自失していた。おそらく、自分が一体どんな状況なのか理解できていないのだろうと思われた。 和寿は舌打ちする。 シーツで全裸の日々希をくるむ。そのまま抱いて帰ろうと思うが腰に力が入らない。 アジールは横によけ、和寿のしたいようにさせる。 「ひびきをそのような状況にしたのはわたしではない。わたしは何も命じていない。媚薬を盛ったのはザイードの独断だ。わたしは確かにひびきを気に入ってはいるが、強行手段をとることはない。自失した相手を抱くなんて面白くもなんともないだろう。とはいえ、ザイードがわたしに取り入りたいがために、ここまでするとは思わなかった。それを読めなかったわたしの責任は重い。違法な媚薬を使うとはおもわなかった」 「違法な媚薬はどういうものなんだ?俺も飲んだのか」 「少し、特殊な媚薬だ。我が国の特産で輸出を制限しているスパイスを