「海斗、ちょっと落ち着け……」 海斗は止まらない。 湯が大きく揺れて壁にぶつかり波打った。 一気に距離を詰められて、湯の中で日々希の脚が、海斗の膝に押さえられた。 逃げ場を塞ぐように、片手を壁につく。 二人の間には遮るものは何もない。 「ちょい、待て。何するつもりなんだよ。ここは、神聖な場所だよ!」 「好きなんだ」 「はあ!?」 展開の速さに日々希はついていけない。近付く顔を背けようとした日々希の顎が捕まれ、海斗の唇が押し付けられた。 ギュッと閉じた唇を強い舌が、こじ開けようとした。 「やめろよっ」 堪らず抗議に開いたところに、舌がねじ込まれる。 口内を探り、日々希の舌をとらえて絡まる。 日々希は生々しいキスに、力任せに腕を突っ張った。 手の平から伝わる海斗の胸はドキドキと拍動し、その強さと胸の筋肉の弾力に、日々希はどきりとした。 広くてびくともしない強い胸だった。 ギリッと背が岩壁にあたる。 海斗は胸に押し当てられた日々希の手首をつかんで開き、壁に押しあてた。 唇を解放し、上からひびきを眺める。 情欲に燃え始めた目が、無防備な体を視姦する。 日々希は海斗がしようとすることの危うさに、慄いた。 それは友人とすることではなかった。 「ひびきが誰とも付き合っていないなら……俺でもいいだろ」 再び顔が寄せられる。今度は首筋に唇がおしつけられようとしていた。 一刻も猶予がないことを知り、日々希は力を振り絞って海斗の腹を押さえられていない側の足裏で、思いっきり蹴った。 ざんっと水圧のために、ゆっくりと海斗は離れる。 海斗は顔を歪めた。その隙に日々希はすり抜け、一気に湯から上がった。 体が濡れていることにも構わず急いで服を着る。 無理矢理ズボンも引き上げた。 海斗は腹を押さえ、湯の中に尻餅をついていた。 「ひびき、ごめん。待