二人は解放された。 日々希は授業を受けなければならないとは思うのだが、まったくそんな気持ちになれない。 昨日からいろんなことが起り、もう以前の自分には戻れない気がしていた。 どんな顔をして、教室に入ればいいかわからないのだ。 そして、先程の理事たちの迫力に気おされし、和寿と体を重ねた戸惑いなどの毒気ごと抜かれた感じである。 彼らが学院を支配する、東郷、西条、南野、北条といった日本を表も裏も縦横無尽に支配する源氏一族の面々なのだ。 南野の代理だけは雰囲気が違うが、それは宗教というフィールドだからだろう。 「あの、特別おしゃれな北条理事は和寿のおじいちゃん?」 そう聞いてみると、和寿は厳しい顔をしている。 「ああ、今日は南野の伯父さんが来るので、張り切っていたな。あいつにとって西条弓弦の生き死には、どうでもいいことに違いないからな」 「すごい人そうなことは伝わったってきたよ?遊び心がないと、バランスがとれないのじゃないの?」 日々希は疑問に思ったことをいう。 「和寿のお父さんもいずれ理事になったりするの?」 和寿は白けた顔をする。 「親父のことは知らん!」 吐き捨てるようにいうので、日々希はしっかりと和寿を見た。 日々希が母親を父と取り合って、いつも父に独占された悔しさを父に抱いているように、和寿のところでも親子間の確執があるのだろうか。 いずれ、話してくれるのだろうか? 知っても日々希にはどうしようもないことかもしれないが、話すことで和寿が持つ父親への冷たくも激しい感情を解き放ち、楽になれるといいと、日々希は思ったのだった。 廊下を歩く二人の耳に、既に聞き慣れた、ヘリコプターの回転翼の音が届く。 爆音はだんだんと接近してくる。 もう一人、ヘリで来る者がいる。 「誰だろう?」 日々希はいう。 和寿の顔がこれ以上ないというほどびりっ