竜崎村の夏祭りを中心にしたムラおこしは大成功だった。 宿泊料と農産物ネット販売の5パーセントが手数料報酬として若者中心としたチームに入ってきていて、祭り最終日までの時点でいったんしめて、それらを均等に若者たちに配分されることになった。 この地方独特の農産物は注目されていて、日本全国から注文がはいったこともあり、思いがけない小遣いを手にして エミはこのムラでの夏休みを終えようとしていた。 都会に戻れば、翌日から仕事が始まる。 ゆったりと息をしていた田舎の時間の流れと、気ぜわしなく動きまわらなければならない都会の流れは全く違う。 だが、どちらもどっぷりと身をひたせば、三日もあれば慣れていく。 元々都会育ちのエミは、元に戻るだけだ。 人生において、村おこしに参戦し楽しくもありほろ苦くもあった貴重な体験だと、後になって振り返ることもあるのだろうと思う。 エミは最寄りの駅まで海斗に送ってもらう。 来たときは、海と山の大自然と若い恋人とのバカンスにうきうきしていたのが嘘のように、心は冷えていた。 海斗の家の牧場の調教師の男が運転し、海斗とエミは後部座席である。 一時間の道中、海斗は押し黙ったままだった。 エミは、初めて海斗とであった時を思い出していた。 幼馴染みと連絡がとれなくなって心配した彼が、全寮制の学校までいったが門前払いされてうちひしがれて、街を呆然と歩いているところを、エミはほっておけなかったのだ。 声をかけたのはエミで、保護し、慰めた。 今回はあの時と同じようで違う。 海斗は幼馴染みに向かっていた感情を恋だと自覚した。 そしてさらに、彼を自分のものにしたい欲望だと知った。 以前は違うものだったかもしれない。断絶した間に海斗の想いは熟成して変化変化してしまったのだ。 だがそれは、目の前で他の男に奪われることになる。 しかも、海斗の幼馴