祭り三日めは朝から、つづら折りの参道に靄がたつ。 木立の間から腐葉土の中から、白いもやがゆらりと立ちのぼり広がっていた。 最終日の祭りの準備に、早めにムラ人は動き出していた。 白装束の改まった姿で、今日誕生する竜神の依り代とその妻である巫女を、神代の気配が残る古き神殿に迎え入れるのだ。 日々希は父と母と一歩一歩確かめるように参道を登っていく。 その足取りは、前日のそれとは違っている。 三人の遅々とした足取りは、先を急ぐムラ人たちに次々と追い抜かされていた。 抜かした後、三人が誰だかわかると、ムラ人たちは愕然として色を失うことになる。 なぜなら、藤恭一郎は、左足先から足首まで厚く包帯を巻いていた。 杖代わりは息子の日々希の肩。 妻の由美子はいつもそうであるように、すれ違うものに笑顔で会釈する。 藤恭一郎は昨日の最終戦で左足小指骨折していたことが判明する。 それにより、最終日は前回王者が棄権する。 山南海斗と北条和寿の挑戦者同士の一戦が決勝に繰り上がる。 今年の竜神を決める最終戦になったのである。 神前試合には衣装が準備されていた。 海斗と和寿が到着すると直ぐに本殿の脇の小部屋にひきいれられた。 そこから白装束の巫媼(ふおう)に岩場の温泉に案内され、湯につかるように指示される。 湯を上がれば、肩で髪を切り揃えた白い着物の少女が白布を用意して待っていて、彼らはそれぞれ体を拭う。 老いた手から油の入った壺を渡され、己の手で全身に塗り込めた。 そうして、禊が終わるとようやく二人はひとつづきの真白い着物に着替え、それぞれ同じ顔をした少女に手を引かれ、今か今かと人が集り静かにざわめいている境内の、土俵脇の席に歩んでいく。 既に、王者の不戦敗は伝えられていた。 激震は過ぎてはいたが、まだ余韻がそこかしこに残っている。 挑戦者はただ一つに残された