最後の勝負がはじまった。 ダダダダダダダ……。 急かすように、煽るように。 小太鼓は、時や空間を細切れに刻むかのように打ちならされていた。 海斗と和寿は腰を落とし、間合いをはかりながら土俵内でまわる。 仕掛けたのは海斗だった。 厚い体を肩でぶつけにいく。 腰紐をつかみ体勢低く、そのまま場外へ押し出そうとした。 寸でのところで和寿は足を踏ん張り堪え、土俵際で踏みとどまった。 お互い渾身の力で押し合った。 海斗の顔が厳しくなる。日焼けた肌から玉の汗が流れた。 和寿の美貌が苦痛に歪む。 海斗頑張れ!ムラの男の意地を見せろ! 和寿さま!山だしの大猿なんてうっちゃって!! 歓声と悲鳴と、二人に大きな声援が送られていた。 海斗は、戻された分、押し返そうと更に足を踏ん張り腰をいれた。 和寿の体が揺れ粘るが、切れ切れの息は土俵際に追い詰めた相手の限界が目前であることを海斗に教える。 和寿は防戦一方で、力比べでは海斗に分があった。 あとひと押しで海斗の勝ちだった。 勝って、有無を言わさず日々希を己の覡(かんなぎ)にするのだ。 白い着物をはだけさせた、日々希の伸びやかな肢体がよぎる。 岩場の温泉で拒絶されたことをするのだ。 いきなりで日々希は準備ができていなかった。もう、自分の気持ちは伝わった。 今度こそ、組伏せ、キスをし、体を開き、蕩けるような交合するのだ。 そのために、いくつもの勝負の勝ちを奪ってきた。 最後の勝利も海斗は逃すつもりはない。 勝利は手を伸ばせばそこにある。 「……頑張れ!」 濁流のように押し寄せる声援の中で、土俵の二人の耳が拾ったのはただひとつの声だけ。 海斗はぎしりと歯を食いしばった。 肩で和寿の重心をあげようとして、持てる力すべてを使って強く押しつけねじり上げた。 だが予想もしなかったことが起こる。 彼らは