午後からはたこ焼き屋台は売れ始めだしてくる。 剛の元気な掛け声と、マネしておそるおそる声をだすクラスの屋台チームの仲間たちである。 そして、屋台の白いテントの奥の、たこ焼きタネやら皿の船、特製ソース、ゴム手袋などが並んだ机のさらに奥のスペースに、即席のテーブルが作られていた。 そこに座るのは、白いあごひげをたくわえ、紋付き袴の理事の東郷金之助、先染めの紬を着流した南野雅楽、委員長代行東郷秀樹、寮長東郷進一郎にボディコン西条弓弦、小悪魔メイドの北条和寿。 見るからに場違いで、一番緊張しているのは背筋を伸ばして座る秀樹である。 今日一日理事たちの案内を仰せつかっていたのである。 それぞれ10個入りのたこ焼きを前に、長い楊枝を突き刺し口に運んでいる。 このそうそうたる顔ぶれが、よりによってたこ焼き屋の裏に、顔を突き合わせてたこ焼きをほおばる図はどうなの?と屋台メンバーは正面を向きたこ焼きを転がしつつ、会話に聞き耳をたてて、迫る威圧感に背筋をうずうずさせている。 「このVESはプログラムから生徒が作成したのか?すごいな。わしも参加できるのか?」 先ほどまで観賞していたのであろう、東郷理事はVESをすっかり気に入ったようである。 隠居したとはいえボディーガードの会社の社長に収まっているので、腕には覚えがあるに違いなかった。 「事前エントリー制になっているので残念ながらできません」 「そこをなんとか秀樹君の力でできないかな」 東郷理事はずいっと斜めに秀樹を見ると、秀樹はその意向を通してあげたいと揺れるが、隣の進一郎が間違えるなよ、というような視線を送るので、太一に俺から働きかけましょうと言いかけた言葉を飲み込んだ。 それは、進一郎が常日ごろよく言う、融通の利かせすぎの部類に入るのだろう。 「理事、申し訳ございませんがいったん決まったルールで、皆が従っており