(64)距離をおこうは別れの枕詞?

2753 Words

授業も終えた昼下がり。 まだ残暑も厳しい重い空気の中、ムーンバックスカフェの席はテラス席も含めてすべてが貸しきられていた。 日々希とリエが今日もバイトに入り、この曜日でないバイトも三人入って5人のフルメンバーである。 まず南野派たちが来店する。 南野派らしく、いずれも整った顔立ちの男子5名女子5名である。 彼らは大きな花瓶をテーブルの数だけ持ってきて、パチンパチンと枝茎を切り、茎をたわめ、薔薇やトルコ桔梗など華やかな花に枝物を合わせ、魂を込めるかのような真剣な顔で活け始める。 「すご……。豪華絢爛というかなんというか。でも、あんなこと勝手に初めていいんですか?」 リエが目を丸くしていう。 たちまち豪奢な花が完成し、10テーブルの中心に、生けるときと同様な真剣さでもって慎重に配置され、まるで野外での婚約披露パーティの会場のようにテラス席が作り替えられていた。 さらに外との境には、白い幕が張られ、結界のようにテラス席と外部が仕切られた。 日々希は学生たちの手際よい設営に感心する。 「お茶会をするんだってよ。この後生演奏だって。南野京子が直にお願いに来たら、断れるものはいないだろ?メニューも軽食を注文済みだ。カウンター前にテーブルにセッティングをしておいてほしいらしいので、よろしく頼むよ。販売するようにパックしないで、そのまま大皿に並べてくれ」 諦めたように店長はいう。 「コーヒーの注文はどうするのですか?」 と日々希。 「それは、いつも通り個人がカウンターに好きなものをオーダーすることになっている」 日々希とリエは、ここはどこかのホテルかと思うぐらいにきれいに整えられたテーブルを見て顔を見合わせる。 まるで別空間だった。 「で、コレはいったい何のパーティなんですか?趣向を知っていた方がこちらもそのつもりでいられるんですが」 日々希の質問に、

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