(63)②危険人物

3570 Words

四天王と目される学生が全員、呼び出されていた。 北条久嗣理事長が彼らを迎える。 多忙で学院行事にも参加することがほとんどない彼がここにいることが、事態の重要さを示していた。 そこで彼らは、アラブの豊かな某B国からの王族が短期留学で大和薫英学院に入学したことを知らされる。 国内の勢力争いのために24時間警護は必須で、彼の日本滞在スケジュールは極秘であり、大和薫英にも直前まで来ることが学院側にも知らされていなかった。 集められた彼らは、学生代表としてアジールの学友として彼に付くことを打診されていた。 某B国が持つ莫大な財力、未来都市計画の実行力、企業集約力は桁外れて大きい。 きらりと光るアイデアや最先端技術を持つベンチャー企業があつまり始めている。 今後、この国の動向次第では世界の景色が一変するることもあり得た。 そのあらたな時代を先頭にたち牽引するかもしれない某B国の王子なのである。 将来国家の中枢に立つかもしれない王子の懐に入り、新な世界地図に源氏一族が入り込んでおくための布石を打つのに、王子の留学はこれ以上望めないほどの絶好の機会だった。 だからこそ、北条和寿がここにいるのだった。 源氏一族は独立しているとはいえ、一つの目的の元に集結することもできる。 ある種の粘菌は、普段は単独行動をしているが、危機的な状況が重なれば集約し茎をつくり、「子実体」を作り出す。子実体が破裂して胞子をまき散らす。まき散らされた胞子はより遠く、より快適な環境を目指し、その命をつなげる。 自分たちが生き残るためには、茎となり犠牲になる部分がある。 たいてい犠牲になるのは南野家の者である。 四人は顔を見合わせた。 南野京子はいう。 「理事長、わたしは南野の家を継ぐことが決まっており、常にアジール王子につくことはできませんが、南野がもし彼に必要なのでしたら、王子自ら

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