(91)②女子とデートは初です。

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樹里亜が行きたかったカフェは、帝国ホテルの中にできた最上階にある瀟洒なカフェである。 日々希には、タクシーがエントランスに乗り付けたそうそうに、その天に届くかと思えるほど高くそそり立つ巨大なホテルというだけで、樹里亜に連れられてここにきたことを後悔した。 ホテルのロビーで待ち合わせをした樹里亜はお構いなしであるが。 最上階のカフェは、ホテル内であるにも関わらずふんだんに緑を配置し、ベランダに続く窓を大きく開け放し、南国のリゾートをイメージし、解放感にあふれたところであった。 こんな誰もがその名を知る一流ホテルに入ったことも初めてで、樹里亜が行こうといわなければ絶対に踏み入れることがなかったと思う。 品のいい音楽がBGMに流れている。 インドやバリで奏でられていそうな、日々希には形の思い浮かべられない長く余韻を残す音色もある。 BGMは途中で切り替わり、時折グランドピアノの生演奏が入り趣を変えたかと思うと、ふたたび南国の音楽に戻っていく。 パフェメニューも豊富で、エキゾチックな雰囲気も、メニューも樹里亜好みのど真ん中のようであった。 日々希にはドレスコードもよくわからない。 スラックスにTシャツ、和寿のおさがりのジャケットという自分の恰好が、もしかしてカジュアルすぎて場違いではないかと内心びくびくである。 いっぽうで、樹里亜はさらっと艶のあるワンピースを着こなし、ヒールの靴は足首をリボンで結ぶ。 ジュリアの、ミステリアスなお嬢様のイメージとは違っていた。 今日のジュリアは、日々希の目の前で、スイカやパイナップル、マンゴー、他にはよくわからないトロピカルなフルーツがもりもりのパフェを食べている、元気でおしゃれ、流行に敏感な女の子である。 売り出されているイメージと本当の樹里亜との間にはおおきな乖離があるようである。 だから時折、本来の自分に戻りたく

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