(27)同じ日常なのに違う。

2177 Words

結局日々希が教室に行ったのは午前の授業も終わりそうな時間で、こっそりと後ろの扉から入ったのだった。 先生やクラスメートが振り返る。授業は何事もなかったかのように進行していく。 斜め前の西野剛と目が合った。 剛は怒っていた。ルームメイトの剛は昨日、日々希が部屋に戻らなかったことを知っている。 案の定、授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると共に、日々希を引っ張り廊下に連れ出された。 「昨日大変なことがあったそうじゃあないか!ひびきも巻き込まれたって話があるが、どうも話すヤツ内容が違っていて要領が得ない。それに、今朝になったら、その西条さん襲撃自体、なかったことになっているじゃないか!!公の場での発言は一切禁止され、目撃者の発言は許されなくなった! 直接関係したやつらは今朝から呼ばれているし、西条さんは朝から来てないし。 お前のバイトのカフェだろ?昨晩の内に確認しようにも、まさかの帰ってこないときているし。しかも、お前、朝帰りですらないっ」 「心配かけてごめん。僕も昨日から、何が何やらで……」 真剣な目をして剛は言う。 「本当に心配した。事件に巻き込まれて死んだか、存在が消されたのかと思った」 剛は日々希の存在を確認するように肩をがっつりと抱く。 「存在が消されるなんてことあり得ないでしょう」 気の済むようにしがみつくのにまかせるが、その発言に日々希は衝撃をうけていた。 剛は満足し、日々希を解放する。 「本当にそう思っているのか?源氏一族ならそれもできないことはない。 襲撃事件自体がなかったことになるために、北条和寿が弓を射た傷害事件は起こってない。この学校は外部から遮断され、完全に源氏一族のテリトリー内だ。報操作ぐらい容易い」 「剛も、昨日のこと知っているじゃない。目撃者も多数いたはずだし」 「ある程度は昨晩の内にね。ただ、ひびきがどうからんだ

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