アラブ某B国第一王子ファザール殿下が訪日する。 プライベートジェットから降り立ったのは小国ながら世界で指折りの豊かな国の第一王位継承者。 アジールと5歳違いの21才。細身の体躯の優男である。 白い民族衣装にスカーフ。襟袖の刺繍はアジールと同じ王家の鷹の紋様である。 アジールの目鼻立ちが通る眉目秀麗な顔立ちと似ていながら、アジールの緑の目は相手を威嚇する、尊大な目元であるのに対して、兄のファザールの黒の目からは、心根の優しさが滲み出ているようである。 SP5人に守られながら優しい笑みを浮かべ、空港に訪れていた一般の旅行客に手を振る姿は、ネットニュースやSNSに早々に掲載されていた。急遽ファザールの後を追いかけたマスコミ各社のTVニュースでも大きく取り上げられていた。 ファザール第一王子は世界がもっとも注目している美貌の若きセレブの一人である。 ファザール第一王子の予告なしの電撃訪問にさまざまな憶測が飛ぶ。 日本国政府のアラブ某B国での新たな石油パイプラインの建設の打診があったとか、日本の女優との逢瀬であるだとか。名前を伏せた政府関係者の証言をもとにしたという勝手な報道が、王族の華麗なる生活と共に、各種メディアをお祭騒ぎのように賑わせていた。 ファザールを乗せたリムジンの一群が、警察車両に先導されて都内の5つ星ホテルに乗り付けた。 日に日に増えていくメディアやユーチューバーたちは、ファザールのホテル周辺に集まっていた。 ※ 数日後、和寿は日々希と共に、都内の病院にアジールのお見舞いに行く。 お昼のニュースが兄王子の訪日を声だかに伝えていた。 検査入院も三日目となると王子が退屈しているというので、有能なサーバントであった和寿に白羽の矢が立ったのだ。 この一ヶ月ほど朝から晩までお仕えしていた和寿は解放されて清々していたところの見舞いで、一人では嫌だと日