(42)①美しい二人

3505 Words

太一と日々希が上級生の五人に連れ込まれたのは校舎の影になるところ。 じめっとした空気がよどむ。 それでも人通りが全くなくなるわけではないので、上級生たちは偶然とおりかかった者たちの視線を遮るように立つ。 上級生の岡村は日々希の肩を押しどんと壁に押し付けた。 グイイッとネクタイを引っ張り、乱暴に引き抜いた。 はっと驚き開いた大きな目、少し開いた濡れた唇。 こいつやけに色っぽくないか? 岡村は例の子を間近にみて思う。 その襟元にナイフを突きつけシャツの合わせ目にナイフを差し入れボタンの糸を切っていく。 ひとつ、ふたつ、みっつ……。 ひとつ切るごとに小さくぴくりと身体が跳ねる。 それでもなされるがまま、固まっている。 視線がナイフの刃に釘付けになっている。ヒューっと喉から細い息が鳴っていた。 「岡村、目的が変わってきているよ!」 「馬鹿いえ。危機感を演出するんだよ」 岡村の目の色に気が付いた上級生のひとりがあきれていった。そういった彼も、彼らの派閥のトップである西条弓弦が命の恩人だと言った藤日々希が、はたして本当に英雄であるのか確かめたい気持ちが勝る。 日々希を壁に押さえつける岡村は、己を睨み付ける獲物を前に嗜虐的な興奮を増していく。 痛めつけ従わせる興奮に、別の意味の興奮が沸く。 それまで、岡村にそのような感覚を持ったことはなかった。 「あんた、よくみるときれいな顔してるな。それで西条さんをたぶらかしたのかよ?動くなよ」 ナイフの先でシャツを開き胸を大きくはだけさせた。 その視線がシャツに隠されていた日々希の乳首に落ちる。 岡村の喉仏が何かを期待してゴクリと動いた。 岡村の頭が日々希の胸に近づく。 太一は見ていられなかった。 岡村がしようとしているのはいかがわしいことに違いがなかった。 彼らは確かに目的が変わっている。手数料と

Free reading for new users
Scan code to download app
Facebookexpand_more
  • author-avatar
    Writer
  • chap_listContents
  • likeADD