(40)返済不要の先行投資

4034 Words

金沢太一は背筋が凍るような恐怖を感じた。 「教室をのぞくと授業をでていないと聞いて、もしかしてここかなと思って。もしかして午後からの準備をしているのですか?」 東郷進一郎は銀縁のその奥の冷やかさとは裏腹に、穏やかにいう。 金沢太一の背後に身をの乗り出して何をしているのか見ようとする。 「は、はい。もう大丈夫です。今日締め切りの裏レースの順位発表用の資料と、入賞者賞金の準備をしていました。 あらかじめ、カモフラージュ用に途中まで用意していた画面をだした。 どうか先ほどまで見ていたものを東郷進一郎がよくみていないことを願いながら。 キーボードをはじく指が細かく震える。 「ふーん?偉いね!流石、裏レースのとりまとめ責任者だ。だけど授業を休んでまですることではないな。ひとりで時間がたりないようなら、誰かに助けを求めることもできないといけない」 「はい、すみません」 だが、これで終わりではなかった。 「で、太一君が、何を熱中して見ていたのか知りたいなあ」 丁寧な口調ながらも東郷進一郎には、有無を言わさず従わさせる強制力がある。 底知れぬ恐さを感じる。 咄嗟に嘘をつくことも考えたが、嘘をついていたことがばれたときが恐ろく思う。 「個人情報システムから……」 「大和薫英学院の個人情報システムのこと?」 「……藤日々希の情報、見るために理事長レベルのアクセス権で閲覧し……」 「理事長レベルで藤日々希を!?」 東郷は眉をあげた。 理事長レベルは、寮長、先生、学年主任、その上の最高レベルのセキュリティレベルになる。 「藤日々希の両親は学院卒なので、彼の両親それぞれを検索し、東郷秀樹の閲覧履歴から警視庁警察シス情報システムに入って、警視庁長官レベルのアクセス権限で藤日々希を検索しました」 「警視庁警察システムにハッカーしたのか?ちょっと待って、どうして

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