(39)太一、秘密に近付く。

4421 Words

翌朝、金沢太一は早朝から情報室に籠っていた。 一晩中ごちゃごちゃした頭で眠れなかったその原因を解決せずにはいられない。 昨日、個人情報システムに入ったとたんに東郷進一郎が来たため中断したことの続きを行うつもりである。 一度破ったシステムは二度目は簡単に破れる。 まだ昨日に自分が通った痕跡が残っている。 太一は自分の足跡をたどりながらその痕跡を巧妙に消し、今回は新にドアを作る。自分専用の裏口である。 これで入りたいときに自由に入れる。 そこまでしてから情報を探る。 知りたいのは藤日々希の個人情報。 太一が密かに心を寄せる美貌の北条和寿のお気に入りだから、という理由にもうひとつ調べたくなる理由が追加されてしまった。 上級生が言った、例の子。 例の子とはどういう意味なのか。 既に彼らは、共通認識を藤日々希について持っている。 彼は普通に入学してきたのではない特待生の子であるという意味でなはい、含みを感じた。 そもそも上級生が、下級生を特待生か一般入学者かなど区別しているとは思えなかった。 考えてもわからない答えが、理事長しか閲覧できない中にありそうな気がするのだ。 少なくとも、個人情報に関してはここにあった。 住所 ……郡 竜崎村168番地 父 ……生まれ。藤 恭一郎 森林組合、組合員 母……生まれ。藤 由美子 (旧姓 南野) 、ピアノ教室個人経営者 「……村ってまだあるんだ。本当にド田舎なんだな。両親は同い年で35歳か、若いな。20の時の子になるのかよ?母親は、え?南野?南野って南野京子の南野かな?一族ならば、本流に近い家の出身?母が南野ならば、藤日々希は南野家の出身ということになる?」 情報室にこの時間は誰もいない。 つい声に出してしまう。 横を歩く藤日々希のほわっとした感じを思い出した。 押し付けられたノートの山を、別のクラ

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