「なに腑抜けた顔をしてるんだよ!」 そう声を厳しく日々希の顔に突っ込みをいれたのは西野剛である。 腑抜けた顔、そうかもしれない。 人死にまで起こし、さらには四天王が軒並み死にかけたのももう数週間前の話である。 もっともザイードの死は心不全の自然死とされていたが。 大和薫英学院に大嵐を巻き起こした台風の目のようなアラブB国王子アジール王子が帰国すると、学院はあっという間に試験に突入し、試験が終わると今度は一年で最大のイベントともいうべき学院祭へとなだれ込んでいた。 アジール王子の世話が大変だっただろう!ということで、彼が帰国した今、日々希は大した役割も振られず、特に何もすることがない。 実際には、アジール王子が帰国する前から学院祭の準備は始まっていて、日々希はすっかり取り残されていたのである。 そして土曜日の今日は。 テストが終わって迎える週末で、和寿と町へ出かける予定であった。 それが、当日朝の和寿のドタキャンである。 心底申し訳なさそうに、あいつの急な呼び出しで出なければならなくてまた埋め合わせはすると言って、朝食を手早く済ませると和寿はパラパラとヘリで出て行ってしまったのだった。 それで、剛の指摘したように腑抜けた顔で、205号室に戻ってきていたのである。 剛は入れ替わりに外出をするところであった。 軽めのジャケットにジーパン、斜め掛けのカバンといったカジュアルな格好である。 「どうせ、あの超忙しいおぼちゃまにすっぽかされたんだろ?」 「おぼっちゃまというほど甘い感じはないよ?でも忙しいとすっぽかされたのは大正解」 日々希はベッドにダイブした。 和寿は日曜日も家の用事といっていた。 北条家の跡取り息子はこれからどんどん忙しくなるのかもしれなかった。 自分にばかり構っていられないのだろう。 日々希は田舎の子である。 親から引き継