日々希の警告に、南野京子のように条件反射のように反応したのは西条弓弦である。 聞くやいなや、プールサイドに手をかけて体を水から引き上げようとする。 だが水から上がろうとするその顔は真っ青。 その腕は体の重みに耐えかねてブルブルと震えた。 何度か高跳び込みをしたぐらいで、疲労困憊するような西条弓弦ではない。 それでも自力で体を引き上げると、膝をつき立ちあがるのではなくて、プールサイドで体をくの字に折り曲げ、胸をかきむしるように押さえた。 「心臓が……クソッ」 ぐっと喉の奥が詰まったような音をさせると、西条は白目を剥いた。 大きな体がビクンと跳ねあがった。 痙攣だった。 痙攣は危険であった。 固いコンクリートの地面に頭を打ち付ける場合もある。 「北見!西条の頭ごと体を押さえて、舌を噛ませないように口のなかに何か噛ませて!!」 慌てて北見は西条の頭の下に体を滑り込ませ、頭を掴み体に足をからめて押さえ込んだ。 「誰かタオルを口に噛ませてくれ!」 北見が状況が理解できずに立ち尽くす水泳部員に助けを求めた。 部長が弾かれたようにタオルをつかんで駆け寄った。 日々希は状況を把握しようとぐるりと見渡した。 いきなりの展開になすすべなく口を押さえて真っ青な顔の顧問の先生が目にはいった。 彼女は頼りにならない。 西条の瀕死な状態を目の当たりにし思考がフリーズしている。 「先生!救急班を呼んで5名必要かも!心臓マッサージの用意を!それから、アジールを引き上げる和寿を助けて!西条弓弦、東郷進一郎、南野京子、南原夢子!の5名に注意して!」 改めて一人ずつ確認する。 西山雄治は西条弓弦に駆け寄ろうとして両膝をつくようにして前のめりに倒れた。 彼もヤバイかった。 「西山も西条と同じ!備えて!」 「皆こいっ!」 部長が部員に声をかけた。 部外者から指