日々希は柔道の道場に移動するときに、廊下を渡る和寿と西条弓弦を目にした。 和寿は朝食の時のそっけない態度を改め、西条弓弦と真面目な顔で会話をしているようだった。 そこへ、三年の東郷進一郎が友人たちと合流した。 四天王が三人が揃うと圧巻だった。 東郷進一郎の気さくな態度は、秀麗な和寿以上に人気があった。 初日の柔道の授業は、学年関係なく合同稽古の日である。 一年に割り当てられた更衣室で着替えた。 一般クラスの今野、山崎、川嶋、広田、下田らもいた。中でも、大柄な今野は更衣室の中でも屈伸運動などして体の調子を整えていた。 「今野、柔道着が様になってる!」 今野は東郷派を希望し、警察志願である。 今野は外部入学組のなかでとりわけ寡黙な男である。いかにも木訥で屈強そうな、既に警察官の雰囲気をゆったりと醸し出している。 「皆は受験勉強で黒帯をとる時間がなかっただけなんだろ?西野くんも強そうだね」 同期の柔道着姿を丁寧に順番に見て、今野は言った。黒帯は今野だけである。 「あたりまえよ!俺は経験者だぜ!」 小柄な体を大きくそらして剛は胸をはる。 日々希は柔道は中学で少し学んだだけ。 いつも海斗たちとしか相手にしていない。 先生も柔道は専門外だったようで、適当だったように思う。 まったくの初心者は川嶋だけだったようで、左と右の襟を間違えて前にして、馬鹿だな!と西野剛に言われて直されていた。 日々希は道場に敷き詰められた畳に上がる直前に、道場を見回した。 百人はいる。多くてぞくりときそうになるが、日々希が注目されることはないのだ。彼らは、更衣室で体を整えていた今野と同様に、それぞれが飛び跳ねたり前屈したりしていた。すでにやる気が熱気になって道場を満たしている。 二年は黒帯も多い。学年ごとになんとなくかたまっていて、三年は全員黒帯。一年はぱら