番外編 その4、①刑事藤堂仁志、 京都の休日

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京都の残暑は最悪である。 一歩ホテルからでると、強い日差しにアスファルトの照り返しに加えて盆地特有の湿度にやられてしまう。 藤堂仁志はスーツの上着を脱ぎ、白ネクタイをむしりとるように取り、マチの広い大きなつや消しの紙袋に押し込んだ。 紙袋には大学時代の友人の結婚式の引出物が入っている。 久々に会った友人たちは、金融関係、新聞社、ウェブゲームの世界に入ったヤツなど業種も職種もさまざである。 昔は一緒になって馬鹿をした悪友たちであったが、その業界特有の空気をオーラのようにまとっているのが面白い。 職業職種を知らなくても当てられる自信があるのは、藤堂が刑事という仕事で身に付けた特技のひとつであろう。 「藤堂は、なんだが凄みがでたな、目付きが悪くなったか?」 それが数年ぶりに再会した友人の感想である。 藤堂が感じたぐらいだから、彼らも藤堂のまとう空気の変化を感じたのだろう。 藤堂は卒業後、キャリアではなく一般の警察に入り交番勤務を経て、ガッツを買われて今年から念願の刑事となった。 「せっかくだしお茶でもしていくか?」 二次会をパスした新聞社勤務の恵比須がいう。かれは業界がマスコミなせいか、内勤とはいえセンスのよいコジャレた鞄にスーツである。彼は藤堂仁志と同様にジャケットとネクタイを引出物の袋にしまう。 本通から一本東側の木屋町通りを南下することにした。藤堂たちの大学は京都だったので京都の市街地は庭のようなものである。 「先日のアラブ某B国の王子さまの警護に駆り出されて大変だったのではないか?」 「まあな」 適当に当たり障りのない範囲で答える。 友人とはいえ、恵比須は新聞社勤務なので、めったなことは言えない。 「わお、目立つやつらがくる。芸能人か?」 恵比須は口笛を吹き出しそうな高揚した目をして、正面から歩いてくる若者を見ていた。 つい、合流す

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