(54)番狂わせの予感

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例年、竜神祭が行われている3日間の夜には、地元の名家である山南家の、瓦屋根が連なる広いお屋敷の広間が解放される。 そこでは料理と酒が大盤振る舞いされ、賑やかな饗宴がなされていた。 初日が終わり、勝った者も負けた者も、豪華で豪勢な御馳走に舌つづみを打つ。 連日、祭りを盛り上げるムラの者が集い、豪快な牧場の主の笑い声が牧場に響くのである。 だが、今年は早々に主人の仁志は退席していた。 今年の喧嘩祭りでは番狂わせが起こりそうだと噂されている。 昼間の神前での喧嘩勝負の土俵には、右に山南仁志、左に藤恭一郎が座している。 ふたりは友人であり、ライバルである。 一日目、二日目は、彼らに挑戦するものはなく、下々の喧嘩を楽しむのみである。 例年なら三日目に、挑戦者は幾つもの勝負を勝ち抜いた武者が彼らの前にたつ権利を得たとし、勝負に挑む。 まずは、右の仁志が勝負を受けてたつ。 挑戦者は全員、熊のような仁志に勝てないと前回王者の恭一郎と勝負させてもらえないのだ。 仁志が挑戦者の最後の関門であった。 そして、この最後の挑戦者に勝てば、本当に最終決戦となる。 だが、今年は暗黙のルールを知らない外部の腕に覚えのある男たちが、あろうことか初日から、恭一郎に神前試合を要求する。 なので、代わりに仁志が受けて立つことが続いていた。 空手、柔道、相撲、剣道、ボクシング……。 最後の砦の山南仁志は初日こそ、6名の武者を破ったが、過酷な戦いに体は悲鳴を上げている。 明日の早い時間帯に、藤恭一郎が勝負の場にひきずりだされるだろう。 祭り二日目に、何人も相手にしなければならないとあれば、10年勝ち続けた強者と言えど、最後まで勝つのは難しいといえる。 今年は大番狂わせが起きそうなのである。 「親父の様子を見てくる」 海斗は宴席を早々に退席した父を追って席を立った。見たことの

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