(103)保健のマキシム先生

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保健室は近かった。 さりげなく敦賀が視線をかばってくれるのがありがたかった。 敦賀は保健室の扉前に日々希を残してすぐに踵を返した。 ラビットチームはいま一番注目されているといってもよくて、チームメンバー全員忙しい。 治療している間付き添ってくれるぐらいの友人でもない。 保健室は入学早々に来たことがあったが、その時は年配の女性の先生だった。 入ってすぐの正面の窓に面したところに先生の机がある。 右手は病院のようなベットが並べられてカーテンで仕切られている。 消毒薬とシップの匂いのする保健室であった。 真正面の回転椅子にゆったりと腰をかけて、パソコンを開きながら、何やら資料に目を通している白衣の後ろ姿は、そのその時の先生よりも大きい。 男のものである。 白に近い金髪で肩につくくらいに長くて、鬱陶しいのか後ろで一つに結んでいる。 日々希は一瞬ジョシュア先生かと思った。 日々希に気が付いて顔をあげ腰を上げずにくるりと振り返る。 その顔を見て日々希は固まった。 淡い瞳の色。薄い肌色。 外国人で、近寄りがたい大変整った貴族的な顔立である。 大和薫英学院に入学してから、和寿、西条弓弦、西川雄治、南野京子といった目を奪われる容貌の者たちがいることを知ったし、ジョシュア先生を始め、アジール王子など外国人に気おくれはしなくなっていたと思っていた。 そんな日々希であるが、緊張した。 「君は?気分が悪いの?どうしたの?言葉で説明してもらえるかな?えっと一年生かな?驚いているのは前の先生と違うからかな? 僕はこう見えても保健の先生です。半年ほど留学していて、数か月前に復帰したんです。ここは外国人の先生も多くいるでしょう?彼らよりも僕は優秀ですから安心してください。ちゃんと日本の医師免許も取っていますから。外国人なのにすごいって?それほどでもないですよ。言葉の壁

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