日々希は強い力で301号室に引き込まれた。 タオルと着替えを落としてしまうが、片手で日々希の腕を掴んだ和寿は、体を入れ替えて扉を背にし、扉を閉じた。 このまま襲われる!と構えるが、この部屋の主はそういう意図があるわけではないようだった。 腕もなんでもなかったかのように解放される。 後から思うとそれは油断させるためだったと思うのだ。 「俺から逃げ回っていたお前から、急に話があるとはろくな話じゃないだろうが、聞いてやる」 部屋から出さないように扉を背にして腕を組みムッツリとした顔をみると、腰が引ける。 和寿のいう通り、日々希は顔を会わさないように、求められないように逃げ回っていたのだった。 「それは風呂の後で……」 と言いかけるが、北条和寿は日々希に顎でソファを示した。 「後回しにしても良いことはなにもない。悪い知らせほど先にした方がいいと親に言われなかったか? ひびきは、言いにくいことは言えなかったり行動できなかったりで、問題をこじらせるタイプなの?」 「そうじゃないけど……」 「なら、今すぐ話せ」 後回しにして良いことはない。 その通りである。どんなことでも自分に主導権を得ようとするところが、北条のトップになる男なんだろうな、と思う。 日々希は覚悟を立て直し、ソファに座り、背筋を伸ばした。 和寿はその隣に座った。 「僕は男と付き合えない。和寿と付き合えないというのではなくって、他の誰とでも、同性とは付き合えないし、付き合わない。想像したこともなかったから、和寿とはこれ以上は無理、ごめん。以上!」 「……それだけ?」 拍子抜けしたように、和寿はいう。 重ねて日々希はいった。伝わらなかったと思ったのだ。 「だから、和寿とは付き合えない。友人として僕を扱って欲しい。僕も友人として和寿を思う!」 「なんだ?俺のコイビトの位置付けはいらな